生産者紹介

佐藤農場

佐賀県で東京ドーム約6個分の面積を耕作。有機JAS柑橘生産量は日本最大級。

100本から始めて3万本。有機みかん出荷量日本一

一般の柑橘栽培では、たくさんの農薬・化学肥料が使われ、低農薬、減農薬と謳われているものも安全であるとは言いきれない。無農薬・無化学肥料の有機みかん栽培者は、全国のみかん農家6万人ほどのなか、わずか100人程度。0.2%もいないことになる。 柑橘栽培が盛んな土地として知られる有明海に面した多良岳の裾野一帯。 この地で全国最大規模の有機の柑橘園を営むのが佐賀県鹿島市の佐藤睦さん。東京ドーム6個分の佐藤農場の敷地はすべて、有機JAS認定を受けている。 佐藤さんの作る有機みかんの皮には黒い斑点があり、慣行栽培のきれいなみかんに比べると見劣りはするが、それこそが消費者が求める安心安全な無農薬の証しだ。 第16回(平成22年度)環境保全型農業推進コンクールで、全国8団体に送られる最高賞「農林水産大臣賞」を受賞し、平成26年食品産業会長賞、野菜ソムリエ購入評価第1位に輝いている。

草倒し農法で土を作る

畑の土が酸性なのかアルカリ性なのかは、草を見ればわかります。酸性土壌には、アルカリ性になるようにというバランスが働き、カルシウムやマグネシウムをいっぱい含む草が自然に生えてきます。畑に合う草が共存共栄して、役目が終われば次の草に変わっていくのです。 草は、刈ってしまうと再生が早いと気づいてから、できるだけ刈らずに倒していく「草倒し農法」を実践しています。ずっと続けていれば、草が肥 料になります。柔らかい春草は、とてもいい仕事をしてくれて、うちの土はふわふわです。紫外線が直接地面に当たらず、微生物が増えて土壌環境が改善されます。大雨のときには表土が海まで流されてしまうのを防ぎます。多数の小動物が住む、よい腐葉土を作るには4~5年かかります。土を健康にしないと作物も健康になりません。普通の農家は雑草が大嫌いです。よその畑は除草剤を4~5回撒きますし、農薬や化学肥料も土を傷めます。草が一本もなくて見た目がよくても、土はコンクリートのように硬くてガチガチで、みかんの木の方に虫が寄ってきてしまいます。

農薬との決別

昭和36〜40年頃の国の施策は、「鹿島は気候風土や土壌が柑橘類に適しているから、みかんの産地としてがんばって、後継者を増やしていきましょう」というものでした。この一帯は階段状の急傾斜地で、梨や桃などのほかの果物を作りにくいという事情もあったのです。 昭和43年にみかん栽培を1ヘクタールからスタートして、最初の15年間は農薬や化学肥料を使う慣行栽培でした。「ああ、またか」と思うほど、農薬散布が大嫌いで、みかんを作る間、ずっと農薬や肥料を散布して自分の人生終わりかなと思ったら、やりきれない気持ちでした。そのうち、農薬を大量に散布して見た目の美しいみかんを生産し、県知事賞を受賞して表彰されるような、すごいみかんを作る農家ほど健康を害していると気づき、農薬をやめようと決意しました。自分が健康を害して作ったみかんを消費者に食べてくださいとは言えません。59年から減農薬栽培に取り組み、62年に無農薬・無化学肥料栽培に切り替えてから、30年以上になります。有機に切り替えた最初の頃は失敗ばかりでした。害虫が発生して病気も多く、収穫直前に全滅したこともありました。秋の収穫には次の1年分の生活がかかっています。子どもはまだ小中学生でしたから大変でした。あちこち借金に回りましたが、「家や車を処分したらお金ができるでしょ」と、どこも貸してくれません。それでも無農薬はやめませんでした。失敗すると周囲は手を叩いて喜びます。元に戻ったら笑われるだけです。無農薬みかんを購入してくれそうな店や業者を電話帳で調べて、10万円分の切手代を使って手紙を出しても、売れませんでした。続けているうちに、安価ながらも長野県のユーコープが全部とってくれるようになりました。

全国にファンを育てる

うちのみかんは特別甘いわけではありませんが、素朴な味がして、昔ながらの酸味も甘さもあります。温州みかんは販売期間が9月から2月ぐらいまでと長いので、いちばん作りやすい柑橘です。ほかにもポンカン、八朔、デコポン、甘夏、ネーブル、レモンと、いろいろな種類を作っています。「有機の八朔を作ってください」とお客さんからリクエストをいただいて、3~4年待っていただいたこともありました。 みかんを毎年10キロ買う人が1000人、2年に1回10キロ買う人が1000人、思い出したように3年に1回10キロ買う人が1000人、全国で合計3000人います。おもしろいでしょう? 京都の保育園からは毎年、キロ数ではなく、600個などと個数で注文があります。「佐藤さんのおじいちゃん、みかんうまかった」と子どもたちからはがきをもらったり、文章の上手な達筆の感謝の手紙をお客さんからいただいたりすることも多く、励みになって嬉しいですね。

耕作放棄地対策や失業者雇用に注力

1ヘクタールからスタートしたときには畑の面積を増やしたくても、売ったり貸したりする人はいなくて、10アールで70〜80万円ほどしました。いまは10アールで20万円ほどか、ただでもいいからもらってくれという畑もあります。高齢化で耕作放棄地がどんどん広がっています。 平成13年、有機JAS制度の開始とともに全柑橘圃場8ヘクタールが認定され、初めて社員を一人採用しました。地域内の耕作放棄地を借り受け、現在では32ヘクタールと圃場面積の拡大を行いました。平成23年には農業生産法人化して、自社加工場も新設しています。パートさんまで含めた社員数は16人です。当面の目標は50ヘクタルと決めています。今年の生産量は300トンですが、オーダーは500トンだったからです。あと20ヘクタール増やしたら、仕事がない地元の若者を10人ほど段階的に雇用できます。 安全安心なみかんを社員みんなでワイワイガヤガヤ作ったら楽しいし、そのみかんでみなさんを健康にするのが理想です。

こだわりを活かす後継者(宮本政明さん)

草払いということで募集があり、有機栽培について何の知識もなく入社し、背丈くらいの草を刈らなければならないことに驚きました。入社時は8ヘクタールを4人で管理していましたが、現在は32ヘクタール。全部の畑を回れていませんが、最低木が枯れないように管理しています。 佐藤農場は有機栽培みかんの全国シェア3割を占め、お客さんが有機を理解しているので、柑橘の見た目の悪さにはクレームがありません。逆に皮に黒い点が入っていないみかんはおかしいと言われます。 いまの32ヘクタールから近い将来は50ヘクタール、長期的には100 ヘクタールが佐藤農場の目標耕作面積です。まずは現主力商品の温州みかん以外の柑橘として、8 月の中旬から6月まで収穫しながら出荷できるレモンを、10~20 ヘクタールに増やしたい。皮まで使う人もいて、国産無農薬レモンの需要が高まっています。目標がいまの3倍なので、甘夏など、温州みかんと時期をずらすことで倉庫の作業効率をあげていきたいと考えています。 耕作面積が3倍になったら人員も3 倍の40~50 人ぐらいになります。研修生を受け入れ、その人たちがいずれ独立し、耕作放棄地で有機の柑橘を育ててもらいたい。未来の会社と地域を思い描きながら、社長が築いてきた資産をどう活かすかが課題です。

DATA
佐藤農場(佐賀県鹿島市)
主な生産物:みかん(9月〜1月)有機JAS
代表者:佐藤睦
主な作物出荷カレンダー