生産者紹介

晴香園

化学物質過敏症の人々にりんごを届けたい。有機のりんごはその思いから始まりました。

日本に数件しかいない奇跡のりんご農家

りんごには通常、32〜35剤の農薬が使用されるという。野菜や他の果物に比べ、りんごの無農薬栽培は減収率が90%を超え、不可能に近いといわれている。化学合成された農薬や化学肥料を一切使用しない有機JAS認定となると、さらに厳しい基準が設けられる。隣の畑で使われる農薬の影響を排除するため、隣接するりんご畑の多くを緩衝地帯として認定地から削除しなければならないのだ。完全に農薬の影響のない地帯で収穫されたりんごだけが、有機JASシールを貼って出荷できる。りんごの有機認証を取得している生産者は日本にほんの数人しかいない。

晴香園の代表・福田秀貞さんは、圃場の全面積4・5ヘクタールで有機JASの青森りんごを栽培している。1999年に青森県の特別栽培、2005年に有機JASの認証を取得した。幾多の困難を乗り越え、試行錯誤を繰り返しながら、自分自身や消費者の体によい、健康的でおいしいりんごを育てたいという信念で栽培し続けている。

誰もが皮のまま食べられるりんごを

りんご栽培が盛んな青森県南津軽郡藤崎町で17年間、化学合成された農薬・肥料を使用せず、自然に近い環境で有機りんごを大切に育てています。抗酸化力が強く、時間が経っても切り口が褐色化せず、白いまま乾燥していきます。安心して皮ごと食べられる、おいしいりんごです。

昭和40年に大学の農学部を卒業し、家業のりんご栽培に3代目として従事しました。母が愛読していた健康医学社の月刊誌に減農薬栽培のりんごの宣伝を載せたことをきっかけに病気で苦しむ方々の存在を知り、無農薬への挑戦を始めました。米や野菜の有機栽培がマスコミで取り上げられ、私たちも講演会や講習会に出かけ、可能な方法を探しました。平成5年に琉球大学農学部の比嘉照夫教授の講演会でEM農法に出合い、翌年から本格的に取り組みました。平成12年に農薬不使用に成功するまでは失敗の連続でした。

有機栽培にやっと自信がもてたのは、その4年後です。有機栽培のために、摘果したりんごを利用した自家製のアップルビネガーをはじめ、ライスビネガー、炭の液体マルチ、EM液を散布し、肥料もEM・米ぬか・ペチレット・堆肥や天日塩などを施して、化学合成された農薬や肥料は一切使用しません。太陽や風の恵みをしっかりと受け、EM散布液がかかるよう、りんご園では樹間・幹間・枝間を十分に空けています。無農薬栽培のりんごは手間暇をかけても1本の木になる実がとても少なく、農薬を使っている慣行栽培の1/2~1/3しか収量がありません。以前は近所のりんご農家からも奇人変人扱いを受けました。

地球の命までをも考える基軸を持つ

青森県のりんご産業は130年の歴史があります。県りんご試験場や弘前大学農学部から、農薬中心の生産情報や防除暦などがりんご協会(生産者の組織)や農業普及センター、農協を通して各農家に流れ、生産者への支援体制が万全なのです。ですから、青森県では頭を取り替えるくらいの覚悟がなければ有機栽培に取り組むことはできません。

自分の命と他人の命と地球の命まで考えるという基軸を心の中に作らないとぶれてしまいます。しかし、母の支え、短大の栄養科を卒業して農協の職員、生活指導員をしてきた妻の泰子の理解と努力があり、困難な道を歩んでこられました。私のりんごは病気で困っている方たちに届けられています。

化学物質過敏症などのアレルギーで普通のりんごが食べられない患者さんが安心して皮ごとかぶりつけるりんごを育てたいと思っています。「おいしくって皮も芯も丸ごと食べています」「いままでは食べられるりんごがありませんでした」「りんごが大好きです。今日はとても幸せで涙が出ました」と、全国の皆さんから寄せられる感謝の手紙が励みになっています。化学物質過敏症という環境病の方々との出会いにより、もっとよいものを作ろうと私たちはいっそう気持ちを引き締め、高みを目指すことができます。当園のりんごが受け入れられ、支持されたことが何よりの喜びや生きがいとなり、とても感謝しています。

持って生まれた個性が大事(妻・泰子さんより)

無農薬栽培に取り組んで、平成5年4月にEMに出合いました。錆びた釘をEM液に入れたら、魔法みたいにサビが取れてピカピカになったのです。驚いたと同時に、これだ!と思いました。人でも魚でも生物は酸化して病気になり、朽ちて死んでいきます。それを再生させるのだから、これこそ人を健康に導く本物だと合点したのです。

北海道の短大で栄養士の勉強をして弘前の農協の職員になったため、食や健康の基礎知識がありました。人が何と言おうと、どんなに辛くても、この真実を追いかけようと決意したのです。道のりは険しく何年も挫折続きで、もうこれまでかというときに、りんご酢を栽培に活用している岩手県のりんご農家の話を聞きました。りんごの未熟果実には成熟果実の5~10倍の天然ポリフェノールが含まれていると、弘前大学の農学博士が完熟りんごと混ぜてジュースを作ったことも話題になり、摘果した青い未熟果でアップルビネガーを作り、りんごの木に散布しています。

化学物質過敏症の方から、「食べられるりんごに巡り合えた」と手紙が届いたときに、「これでいいんだ」と手応えを感じました。ヨーロッパから輸入した有機のドライフルーツしか食べられなかった方にも、「20年ぶりにりんごを食べている」と喜んでもらえました。病気の方には、「空元気でもいいから元気を出して」と返事を書きます。

大きい声を出して笑って励ますことが十何年も習慣になっています。自分が元気じゃないと病気の方の悩みに応えることができません。うちのりんごをインターネットで買ってくださっている大阪の若者が畑を見に来られたときに、「生活にお金がかかっている病気のお客さんにだけ、りんごを安くお売りしています」と説明したら、「お母さんの考え、素晴らしい」と拍手してくれました。若い人も捨てたものじゃないですね。26歳で結婚した当時から、農薬に対して夫は半歩先を考えていて、他の人とは違うと感じました。

親の後ろ姿を見て育った子どもたち3人も自立してわが道を歩み、親子互いに個性を認め合って尊重しています。夫は若いときから常に夢を抱き、自分のことで精一杯。80歳になろうというのに、まだ夢を追いかけています。明日という日は明るい日だから、今日よりも明るい明日を迎えて、次の日はさらに明るく、元気に楽しく人生を過ごしたいと思っています。

DATA
晴香園(青森県藤崎町)
主な生産物:りんご(10月〜2月)有機JAS
代表者:福田秀貞
主な作物出荷カレンダー