生産者紹介

たなかふぁーむ

健康的な野菜を食べて、僕の体調がよくなったように、安全安心な野菜を待つ多くの人に届けたい

無農薬無化学肥料の貴重な九州産ニンニク

中国から九州に伝わり、四国や紀伊半島に広まっていったとされる二ン二ク。国産二ン二クで最も有名なのは、青森県産の「福地ホワイト六片」だろう。青森県産二ン二クは国内総生産量の約4分の3を占めている。二ン二クは青森県以外では、香川・宮崎・岩手・大分・和歌山・徳島県などで生産されている。意外なことに、日本の二ン二ク生産量は世界第36位。世界の生産量のわずか約0.1%に過ぎず、約6割を輸入に頼る。そのほとんどが中国産だ。
二ン二クは完全無農薬・有機栽培が非常に難しく、同じ耕作面積でも収穫量が激減してしまうため、トッププランドの青森産でも数は多くない。
農薬や化学肥料を使わない二ン二ク栽培に取り組んでいる福岡県久留米市の「たなかふあーむ」では、掘りたての新鮮な生二ン二クの出荷は5月から始まる。期間限定の生命力にあふれた旬の香りが魅力だ。

謎が多いからニンニクはおもしろい

嫁さんの父が慣行栽培でやっていたイチジクを、結婚を機に僕も手伝うようになりました。でも、気管支喘息のせいか、消毒の匂いで具合が悪くなってしまったんです。地元で一番イチジクの収穫量が多かった無農薬栽培の農家さんから、「甘やかしたら、人間と一緒で慣れてしまう」と教えてもらって、有機栽培を目指すことにしました。もともと、健康的な野菜や自給自足に興味があったんです。減農薬でイチジクを栽培した後、無農薬で化学肥料も使わずにうまくいきました。
そのころ洪水があって、年代物のイチジクの樹がだめになってしまったので、思いきって抜きました。苗木からまた育てて生計を立てられるのは3年目くらいからですが、そんな余裕はありません。無農薬だと、野菜が病気になると収入はゼロですから、次に何を植えるか悩みました。農薬なしでも大丈夫な強い作物を探して、虫がつきにくいと評判のサ二ーレタスを最初に選びました。
この辺の土は重粘土質で、レンコンで有名な佐賀の白石町の土壌と似ています。雨が降ったらべちゃべちゃになるけど、晴れて乾いたらコンクリートみたいに硬くなる。ストレスがかかって味がカ強くなる根物が土に合うのかなと、次の作物の候補として二ン二クが浮かびました。

試行錯誤でたどり着いた「嘉定種」

暖地系の二ン二クの品種がいくつかあるなかで、白くて大きい「山東ホワイト十片種」を試してみましたが、病気が出やすく、無農薬では収穫できそうにありません。味も香りも弱い。
土地に合う品種を探した末に、病気に強くて味もいい「嘉定種」と呼ばれる八片二ン二クにたどり着きました。二ン二クの原種に近く、皮がほんのり赤くて小ぶりの品種です。疲労回復効果のある成分、アリシンがたっぷり含まれています。
うちでは、堆肥も動物由来のものを極力使わず、海由来か植物由来のものを使っています。広葉樹皮のバーク堆肥は発酵完熟腐植がしっかりしていて、作物が栄養を吸収しやすいんです。キノコの菌床は雑草の成長を抑える効果があります。
二ン二クを収穫した後は、ヒマワリの種を蒔き、少し花がついたくらいで緑肥とともにしつかり土に混ぜ込みます。冬場に作付するサ二ーレタスのリン酸吸収が高められ、豊かな土壌が作られます。

工夫を生かせるところが農業の魅力

畝の中は手取りで除草するので、時間がかかるのが悩みの種です。背が高い分、根が下に伸びる草を水はけの悪い圃場に伸ばしたり、通気通水をよくしようと籾殻をすき込んたり、二ン二クの薄皮を草にかぶせて抑えたりと、あれこれ工夫しています。通路の草は、芽摘み作業のときに千鳥足で歩いて踏みます。たまたま知り合った人とつながって、いいなと納得した方法は、どんどん取り入れて試してみます。今年は裏の圃場で1列ほど、初めて「福地ホワイト六片」も作ってみました。
前から定植を手伝ってくれていた娘の詩歩はこの春、農業大学校を卒業しました。「自分たちで考えて、最初から最後まで工夫しながらやれるから、農業はおもしろそう」と、収穫作業を毎日手伝ってくれます。ありがたいですね。

周辺農家を有機の風に巻き込んでいく

二ン二クを始めて7年目、自家採種で4年目です。どんどん土地に合った固定種ができています。
当初は、除草剤を使わないので、借りている農地の草取りが間に合わなくて、周囲から厳しい目を向けられたこともありました。有機が盛んな土地柄ではないので、最初はそのへんに苦労しました。人ときちんと関わっていかないとやっていけませんから。最近は、「田中くんの畑の近くは農薬が飛散しないよう、風がある日はヘリで防除するのをやめよう」と、有機に理解が生まれています。
畑の面積はいま2・5ヘクタール、二ン二クの収穫量は生の状態で10トンほどです。二ン二ク農家も増えて、山東ホワイトと僕たちの作る嘉定種の二つの品種を合わせて20軒くらいになりました。自分たちの経験や試みていることは、地域の仲間とすべて分かち合います。僕たちに賛同して無農薬に変えてくたさる農家さんが少しずつ増えているのがうれしいですね。みんなで力を合わせて有久機の方向にいきたいと思います。

一つ一つ手掘りで収穫

妻の小百合は、「機械で収穫すると、切断したり傷をつけたりして、二ン二クがかわいそう」と言います。僕たちは一つずつ丁寧に手で掘ります。両親も二ン二ク作りを手伝ってくれます。
佐賀の先生に教えていただいたり、年配のおじいちゃんたちから昔の知恵を学んだり、まだまだ勉強中です。今年は一雨ごとに粒が大きくなって、去年よりしっかり硬いものが収穫できています。
健康的な野菜を食べて、僕の体調がよくなったように、安全安心な野菜を待つ多くの人に届けたいと思っています。だから、土地に合った作物をいかに味よく作るかを日々考えています。
いまは二ン二ク1本で大きくなるのが夢です。二ン二クを作っていて、楽しいんです。収穫前の3月から、そわそわした気持ちになります。5軒でも10軒でも一緒にがんばれる仲間ができれば、またそれからが楽しいんじゃないかと思って、まずはそこを目指してがんばります。

DATA
たなかふぁーむ(福岡県久留米市)
主な生産物:ニンニク【自然農法】
代表者:田中秀樹
主な作物出荷カレンダー