生産者紹介

那須自然農園

全国でも珍しい有機の自然薯は、毎年、栽培が間に合わないほどの注文が入ります。

宇土半島の豊かな自然が育む秋の味覚の王様

柿はピタミンCやカロチン、タンニンなどを豊富に含むヘルシーな果物。 温暖な気候が柿栽培に適している熊本県は、甘柿の栽培面積全国1位を誇る。定番の 「富有柿」 に加え、優良新品種の 「太秋」 の生産量・出荷量は年々増加し、全国の約4割以上を生産しているほどだ。果実の大きさは平均380グラム前後と大玉傾向にあり、500グラムを超えるものもある。梨のようなサクサクとした食感と果汁の多さが特徴で、糖度18度前後と従来の柿よりも2倍ほど甘い。

名水百選にも選ばれた轟水源がある自然豊かな熊本県宇上市で、無農薬・無化学肥料の自然農法を実践してきた那須直敏さん。病害虫や台風と戦いながら、有機JAS認証と完全無農薬・無化学肥料の「MOA自然農法認定」を取得し、 安心安全な米や自然薯、 サツマイモなどの農作物を栽培している。 平成26年には「第19回環境保全型農業推進コンクール」 で優秀賞を受賞した。特別栽培で大事に育てる太秋柿は、「一度食べたら忘れられない味と食感」だという。

食べてみて驚いた太秋柿のおいしさ

太秋柿は熊本県で栽培が盛んな品種です。最初、すぐ近所の人が作り始めたときに、ちょっと分けてもらって食べてみたら、ほかの柿とは全然違う。「わあ、 おいしい!」と、自分でも作ろうと思いました。400~500グラムと通常の柿の2倍ほどの大きさで、子どもの顔のようにもっと巨大なものもあります。りんごと梨をかけあわせたようなサクサクした新しい食感が特徴の甘柿です。

圃場は50アール。30アール未満の農家が多いなか、面積は少し多いほうです。法人化して従業員を4人雇っているので、できるのかもしれません。

親父の代から有機農業、MOAの自然農法に取り組んでいましたから、それを受け継いでいます。親父が始めた 、40、50年前には、周囲に有機農家はいませんでした。うちの田んばで農薬を使わないために「虫が移動してくる」と言われることもあり、技術的なものに加えて、農薬の使用が当たり前の環境で周りの理解を得るのは大変でした。

収量が1/3でも特別栽培を貫く

太秋柿などの改良されたおいしい果樹は病害虫に特に弱いものです。初めの3年間くらいは完全無農薬の栽培に挑戦しましたが、非常に難しく、4年目からは通常の半分以下の農薬を用いて特別栽培をしています。全部で2万個くらい袋かけをしているので、うまくいけば2万個近く収穫できるはずですが、なかなか思うようにはいきません。今年もすでに3000個は落ちていて、売り物になりません。そういう柿がまたたくさんあります。

JAの指導にそって農薬を使えばほとんど全量収穫できますが、今年(2017年)のように虫の害がひどいと、収量は1/3ほどになります。それでも特別栽培にこだわるのは、うちでは米にしろ野菜にしろ、完全無農薬・無化学肥料で栽培するのが基本だからです。いま特別栽培なのは柿だけで あとはすべて完全無農薬で作っていますから、できるだけそのレベルに近づけたいという思いがあります。どうせ農業をするなら、ただ米や野菜をたくさん収穫するということではなく、お客さんに喜んでもらえるような農産物を作っていきたいですね。

自然薯からスタートした有機農業

もともと自作農地は5反くらいしかなかったし、農業だけではやっていけないとわかっていたので、好きだったコンピュータ関係の仕事に就きました。その仕事をしながらも、小さい頃から親しんできた農業が忘れられませんでした。サラリーマンと違って、農業には自分で思うようにできる魅力があります。兼業農家として有機の農作物を作り、平成12年に思いきって脱サラして専業農家になってから、もう20年近くになります。

兼業農家のときにまず手掛けたのは自然薯です。20歳過ぎから40年も作っていることになります。圃場の面積はいま30アールほどで、需要に応えて広げることもできるのですが、太秋柿同様、自然薯は台風にとても弱く、ツルを全部飛ばされて全滅したこともあります。台風のリスクを考慮すると、現状が限界かなと考えています。

太秋柿は11月中に収穫が終わり、自然薯は12月からお歳暮のシーズンがいちばん出ます。今年は台風3号の被害が出ましたが、そのあとは台風の直撃を受けることもなく、ホッとしています。

自然薯の後は親父と有機米を作り、自分の代で太秋柿を始め、サツマイモ、玉ねぎ、にんにくと、野菜をどんどん広けているところです。にんにくはこの土地に合う「嘉定種」という品種を作っています。

力を入れていきたい販路開拓

親父の代はほとんどJA出荷で、無農薬で有機米を作っても差別化ができず、普通の米と一緒に扱われました。50年も昔は自分で販路を開拓するところまではいかず、家族で食べるものを無農薬で作り、余った分をJAに出していたのです。

熊本は有機JAS認証を受けている農家の数が全国で3番目に多い県です。山都町などは特に有機の生産者が多く、まとまった量の有機農産物が確保できるので、出荷先を見つけやすいところがあります。宇土市でも有機の生産者が増えれば取引先が多くなっていくはずです。ひとりで販売しようとしても、量を求める大手は相手にしてくれません。生産者が集まって生産量をきちんと確保できれば、商談しやすくなります。ただじっと待っていても有機農産物は売れないし、もっと販売努力をしていかないといけないと思っています。

私には娘が二人いて、いま娘婿と一緒に仕事をしています。彼が後継者として一人前になったら生産の方を任せ、私は販売の方に力を入れて、早く安定できる形に持っていきたいと思っています。字土地域には農業をやっている若い人の数が少ない上に、ほとんどがハウス栽培というのが実情です。でも、 宇土市のUTOをユーティーオーと読ませるグループのなかで娘婿も活躍し、スーパーなどといろいろな取引を始めています。そういった若者のグループに今後、どんどん伸びていってほしいと願っています。

熊本県でさきがけとなった自然薯栽培

「自然薯にはすごく思い入れがあるんです」と語る那須さん。かつて、「松茸と自然薯は人工栽培ができない」と言われていたが、山口県の政田自然農園が世界で初めて自然薯栽培に成功したという記事を読み、「おもしろいなぁ」と40年ほど前に取り組み始めたという。しかし、山に自生する自然薯を畑で栽培するのは簡単なことではなかった。

「土壌消毒もしないし、農薬もやらん有機栽培だから、病害虫にやられてしまうし、なかなか難しかったですね。10年ぐらいして、やっと少しとれたかなという感じで、その間は失敗の連続でした」

試行錯誤の末に那須さんが熊本県で初めて完全無農薬栽培に成功した自然薯は、1.4メートルの栽培容器からはみ出す2メートル近い長さ。全国的にも希少な有機JAS認証の自然薯は贈答用の化粧箱入りのほか、30センチくらいの長さにカットした真空パックも人気がある。毎年、大手スーパーからの注文も多く、いまは栽培が間に合わないほどだ。

DATA
那須自然農園(熊本県宇土町)
主な生産物:自然薯・柿・米【有機JAS・自然農法】
代表者:那須直敏
主な作物出荷カレンダー