生産者紹介

よしむら農園

多様な生き物が循環と共生する農業を目指し、食育の大切さを伝える活動も夫婦で積極的に行っています。

環境にやさしい農業を夫婦で実践

豊かな大地と清らかな水に恵まれた福井県は、古来より「越山若水」と呼ばれる食の宝庫。生き物を育む農法など、栽培方法に特色がある福井米は高い品質に定評がある。
その福井県のなかでも、若狭湾国定公園にあり、ラムサール条約に登録された「三方五湖」、全国名水百選「瓜割の滝」など、三十三間山をはじめとする山々を源とする豊富な水を誇る若狭町の相田集落によしむら農園はある。
吉村義彦さんは安心安全な食べ物を作りたいという願いから、有機農場を始め、全圃場4ヘクタールでコシヒカリ、あきさかり、ミルキークイーンなど、有機JASの米栽培を実現。古代米や福井梅、野菜の栽培も手がけている。
福井県では今年、「いちほまれ」という新しい品種の米を作ることになり、よしむら農園は有機での試験栽培の認定を受けた。「日本一おいしいお米を全国の皆様にお届けします」 と宣誓した掲示板を田んばの前に掲げ、「全米史上最高ブランド」のいちほまれを、収穫に向けて大切に育んでいる。

田んぼの生き物を守る

いきものいっぱいの田んほの中で
子どもがはしゃぐ田舎のながめ
ぐるりとつながる自然といっしょに
人も、お米も、育っています。
若狭の空気も一緒に食べよう!

これがよしむら農園のコンセプトで、私の名刺にも印刷しています。田んばの向こうに山や川が広がり、JR小浜線の1両電車が1時間に1本ほど通るのどかな田園風景はどこか懐かしく、自然を大切に農業を営めることに感謝しています。
国土の約7割を森林が占め、世界でも有数の緑豊かな日本。その環境に農村は貢献しています。水や空気を浄化する田んほはダムの役割を果たし、多くの生き物の命を育みます。農薬や化学肥料、除草剤を使わなければ川や海の生物も守られます。
合鴨農法や有機栽培では、微生物やミミズ、ドジョウ、カエル、鳥など、たくさんの生き物が田んほに集まり、自然の食物連鎖が行われます。ホタルが住めるこの集落の特性を利用し、多様な生き物や植物が循環と共生のなかで支え合えるような農業をすることに誇りを持っています。
有機農業はレベルが高いと思われがちですが、最もやりやすい農業ではないかと思います。一番大切なのは太陽です。太陽エネルギーと水と炭酸ガスがあれは、お米はできます。稲と相性の合う生き物の組み合わせを実現できれは、光合成という神秘的な働きを受け、稲がそれに応えてくれます。

田舎の恵みは、みんなの宝物

子どもたちに農業に親しんでもらうため、農業体験を受け入れています。 田舎の田んほの恵みは我々農家だけの宝物ではないと考えているからです。田舎に来ること自体が体験学習です。稲を植える作業だけにこだわらす、川にいるドジョウと遊ぶ楽しみも経験して欲しいと思います。やんちゃな子もいますが、稲刈りの秋に収穫の喜びを分かち合えは、思い出が心に刻まれます。田植えや稲刈り作業後のお食事タイムでは、野の恵み山の恵み湖の恵みを少しずつ食べてもらい、田舎の本当の良さを知ってもらえるように努力しています。
ゲストティーチャーとして学校に話をしに行ったりもします。学校の先生だけでは伝えきれないことも地元の子どもたちにきちんと伝えていかないといけないので、お呼びがかかれは私も家内も喜んでやらせてもらいます。うちの野菜を給食の食材に提供しているので、家内が給食センターに野菜の説明をしに行くこともあります。私たちの想いが伝わったことがわかるような嬉しいお礼の手紙を子どもたちからもらうこともあり、できるだけ一人ずつに返事を書くようにしています。

スローフードで食育の大切さを伝える

3歳か4歳の乳飲み子の時分から田んばの近くで子守をされ、農作業を手伝うというより田んばで遊んでいました。いま70歳になり、立場が逆転して田んほに遊ばれているという感じでしようか。
農協に勤めながら平成10年に有機農業を始めました。平成15年に定年を迎えて、保育士の仕事を退職した妻と、環境に優しい農業を通じて安全安心な食べ物を生産する」ことを目標にしました。「楽しく農業をし、田舎を見て遊び、料理し、おいしくいただき、楽しめる仲間を増やす」、これが行動指針です。食事は人間にとって最も大事なもの。スローフードを通じて食育の大切さを訴え、食卓と生産フィールドを結びつけるアクションを起こそうと決めました。
「身土不二」は人間の体と土地は切り離せない関係にあり、土地でとれた旬のものを食べるのが健康に良いという考え方です。地域の食材や料理方法、地産地消などを学ぶ食育はとても大切です。厚かましくても拒まれない程度に次世代に伝えていくのが私たちの年代の義務だと思います。

有機の農業の仲間を増やしたい

例年、1反当り7~8俵くらいとれるはずが、1/3ほどしかとれない年かいまでもあります。いつまでたっても勉強、研鑽です。同じように苦労している方の知恵を借りると、励みになります。
自分が苦労したぶん、他の人にも教えないといった心の狭い人が有機農業の仲間にはいません。自分の失敗を別の人が繰り返さないように教えてくれます。私たちの崇拝する人格のできた仲間に少しでも近づきたいという気持ちがあります。
自給自足は大事ですが、 一匹狼で仙人のように山にこもって何もかも一人で作る時代ではありません。仲間同士それぞれ得意な分野で力を発揮すれば大きな総合力になり、安定した社会が生まれると思います。お互いに安らぎとうるおいのある農業を目指せるのではないかと期待しています。有機農業研究会という組織を作り、仲間が増えています。
身体に良い食べ物と、心に良い環境を糧に夫婦で仲良く定年後の生活を楽しみ、農村の大切さを啓蒙し、将来の子どもたちに残したいと願っています。

絵に託し子どもたちに届ける「お米の力」(吉村春子さん)

「福井のごはんを食べて強くなろう!」運動を2016年から展開している福井県。意識調査によると、福井の朝食の7割はごはんだという。
「福井県は食育でがんばっているから、全国学力テストで成績上位常連県なんですよ」と春子さん。朝食に食べた米がブドウ糖になって脳に栄養を補給し、腸を活発に動かす。腹持ちがよく、手軽にエネルギー補給もできる。そんな米の効能や朝食の大切さを、春子さんは10枚ほどの紙芝居風のパネルにまとめ、幼稚園や小学生、お母さん方に説明し、わかりやすいと大好評だ。
田んぼの生き物がお米作りにどう関わるか、稲や生き物を色紙で表現したパネルもある。農園を食育の場として開放し、相田集落のサロンの運営を手伝いながら、お米の大切さを伝えることが春子さんのライフワークだ。「草ばっかりのうちの田んぼを見て二の足を踏んでしまい、有機農法に一歩踏み出せない人も多いかもしれませんが、もっともっと仲間を増やしたいなというのが、私のいまのいちばんの願いですね」

DATA
よしむら農園(福井県若狭町)
主な生産物:米・梅【有機JAS】
代表者:吉村義彦
主な作物出荷カレンダー